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雇用調整助成金(コロナ特例)-2022年からの変更点は?

2022年になりました。

新型コロナウイルス感染症(以下「コロナウイルス」または「コロナ」)の影響が思いのほか長引いており、これまでに休業をしたことがある、更には現在も休業が続いている会社も多いのではないでしょうか。

コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされた場合であっても、労働基準法に基づき休業手当の支払いが必要になります。この休業手当は、個々人の過去3か月の平均賃金の6割以上である必要があるため、この状況が続くとなると会社の負担は相当なものです。

そのようなときに休業手当にかかる費用を助成し、会社の負担を軽減してくれるのが「雇用調整助成金(「雇調金」ともいわれます)」です。

この助成金は、コロナ期に入ってから緊急対応期間として特例措置が設けられ、その後も頻繁に変更されてきました。

今年2022年1月からも大きな変更点があります。

そこで、今回はその変更点について解説していきたいと思います。

その前に、まずは従来の雇調金とはどのようなものなのか、それがコロナ期の特例でどう変わったのかをみていきましょう。

目次

通常時の雇用調整助成金とは?

コロナ期に入り、「雇用調整助成金」という言葉を耳にする機会がぐんと増えましたが、実はこの雇調金自体は昭和50年からあり、かなり歴史のある助成金になります。
2009年のリーマンショックをきっかけに、中小企業緊急雇用安定助成金(「中安金」ともいわれます)とともに知ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
コロナ期に入ってから知った方の中には、従来の制度をご存じでない方も多くいらっしゃるのではないかと思います。

この雇調金が、今回のコロナ期の特例措置でどう変わったのかを知っていただくため、まずは従来の雇調金の制度(通常時の雇調金)について解説していきます。

雇用調整助成金の目的

経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた会社は、整理解雇いわゆるリストラを検討せざる得ない状況に追い込まれることがあります。
このような場合に、一時的な雇用調整措置(「休業」が代表的ですが、「教育訓練」や「出向」もあります)をもって、労働者を解雇することなく雇用を維持したまま事業を縮小できるケースもあります。
雇調金は、会社が雇用調整措置を行い雇用を維持できるように、会社が支払う休業手当や賃金にかかる費用を助成するものです。

雇用調整助成金の制度概要

先ほど述べた通り、雇調金は、「経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた会社が一時的な雇用調整措置を行い、労働者の雇用を維持した場合」に休業手当や賃金にかかる費用の一部を助成するものです。
この休業などの雇用調整措置は、事業主と労働者との間で交わす労使協定に基づいたものであること、その内容について事前に計画届を提出していることが必要です。

雇用調整助成金の主な受給要件

雇調金の受給要件は、かなり細かくなり手続きも煩雑ですが、ここでは主なものに絞って挙げていきます。

①最近3か月の売上高等が前年同期と比べて10%以上低下していること
②雇用保険被保険者や受入れ派遣労働者数が一定以上増加していないこと
③休業の場合は、労使協定により所定労働日の全日にわたって実施されるものであること(短時間休業の場合は、雇用保険被保険者全員について一斉に1時間以上であること)
④休業等の延べ日数が、月所定労働日数の1/20(中小企業)、1/15(大企業)以上であること(これを「休業規模」といいます)
⑤休業を開始する日を含む賃金締切期間の初日から1年(対象期間)以内であること(再度の受給には前回の期間満了日の翌日から1年を超えていること)

雇用調整助成金の受給手続

雇調金を受給するには、休業を開始する日を含む賃金締切期間の初日から1年間(対象期間)について、実際に休業をする賃金締切期間(判定対象期間)ごとに事前に計画届を提出することが必要です。
この計画届は、初めて提出する場合は、計画開始のおよそ2週間前、2回目以降は計画開始の前日までに提出します。
支給申請は、実際に休業をした判定対象期間の終了後、2か月以内に管轄の労働局またはハローワークに対して行います。

例:賃金締切日が毎月20日、休業開始が4/1の場合
→対象期間1年は3/21~翌年3/20、初回判定対象期間は3/21~4/20、初回申請日は4/21~6/20

雇用調整助成金の助成額

雇調金の助成額については、休業手当の額・教育訓練をした場合の賃金相当額・出向をした場合の出向元が負担した額に以下の助成率を乗じた額です。教育訓練を行った場合には以下の額が加算されます。

大企業 :1/2
中小企業:2/3
教育訓練をした場合の加算額:1,200円(1人1日当たり)


ただし、受給額は令和3(2021)年8月1日現在で1日1人当たり8,265円が上限です。
また、要件を満たしたからといって対象期間中に何日でも受給できるわけではなく、休業・教育訓練の場合は、1年間で100日、3年間で150日という制約があります。

通常時の雇調金の詳細につきましては、下記リンクをご参照下さい。

コロナ期の雇用調整助成金とは?

ここまで、通常時の雇調金の内容をみてきました。簡単にご紹介するだけでも、制度は複雑で、申請手続も煩雑です。(一度、助成金の支給要領を見ていただくとそれがよく分かります)
コロナ期に入ってから雇調金の需要が格段に増えたわけですが、現行の制度では申請側にとっては利用のハードルが高く、申請を受け付ける側にとっても処理が追いつきません。
そこで、緊急対応期間の特例措置として、受給要件が大きく緩和され申請手続もかなり簡易なものになりました。
(緊急対応期間として特例が適用されるのは、令和4(2022)年1月現在で、令和2(2020)年4月1日から令和4年3月31日までとなっています。)

では、コロナ期の特例措置でどのような点が通常と変わったのでしょうか。それをこれからみていきます。

受給要件・休業等の取り扱いの相違点

受給要件や対象となる休業などについて、特例と通常時とで異なる主な点は以下の通りです。

①コロナウイルスの影響により、経営が悪化し、事業活動が縮小していること
→通常時においては事業活動の縮小の理由は特に問われませんが、特例では当然「コロナウイルスの影響」であることが必要です。

②最近1か月の売上高等が前年同期と比べて5%以上低下していること
→通常時は「3か月平均で10%以上」の低下が必要でしたが、特例では「1か月で5%以上」に緩和されています。また比較する「1か月」についても、特定の1か月のみではなく柔軟に取り扱う措置があります。

③短時間休業について、部門ごと、施設ごとなどでの休業も対象となる。
→通常時に短時間休業を行う場合「全員が一斉に行うこと」が必要でしたが、特例ではこれを休業が必要な部署のみで行うなどの対応が可能となりました。

④休業等の延べ日数が、月所定労働日数の1/40(中小企業)、1/30(大企業)以上であること
→通常時の休業規模1/20(中小企業)、1/15(大企業)から大きく緩和されました。中小企業の場合、以前は1か月に1人あたり1日以上の休業をしている必要がありましたが、特例により2人あたり1日以上の休業で休業規模の要件を満たせるようになりました。

⑤雇用保険被保険者や受入れ派遣労働者数が増加しても受給が可能
→通常時はこれらが一定以上数増えた場合、受給することができませんでしたが(休業を行う必要がないと思われるため)、特例では新たに採用したり、派遣労働者を受け入れたりしても受給が可能となりました。

⑥休業時間と残業時間の相殺がない
→受給の要件ではありませんが、通常時は残業をした場合、その時間が休業時間と相殺されます。一方で特例の場合、残業や休日労働を行っても休業時間との相殺はありません。

⑦教育訓練の日に就労することが可能
→通常時は教育訓練の日は就労することが認められませんでしたが、特例では半日訓練した後、半日就労すること(逆も可)も可能となりました。

⑧1年間で100日という制約を超えての受給が可能
→通常時、受給できるのは1年間に100日が限度でしたが、緊急対応期間中はそれとは別で受給することが可能となりました。

⑨雇用保険被保険者でない者も受給対象に
→通常、雇用関係の助成金の対象となるのは雇用保険の被保険者のみですが、特例として雇用保険被保険者でない方(労働時間が週20時間未満のアルバイトなど)も対象となります。ただし、この場合、受給できるのは雇調金ではなく「緊急雇用安定助成金」という別の助成金となります。

受給手続の相違点

①事前の計画届の提出が不要
→特例が出されたばかりの一時期は、事後の提出が必要でしたが、現在は事後においても提出は不要です。

②申請書類への記載が簡易になった
→厚生労働省のサイトに申請様式ダウンロードページがあり、自動計算の様式が用意されているので、必要最小限の入力で申請書を作成することができます。また添付書類についても、通常時では休業協定書の写しや各労働者が署名した名簿などが必要でしたが、売上資料(初回のみ)や賃金台帳・タイムカードの写しなど必要最小限のもので足りるようになっています。さらに、分かりやすいマニュアルや動画も公開されていますので、初めての方でも無理なく作成いただけます。

③労働者が概ね20人未満の小規模事業主についてはより申請が簡易に
→小規模事業主用の申請様式があり、こちらは一般事業主用よりもシンプルな書式になっていますので、より作成が容易になります。

受給額の相違点

前述のように、コロナ期の特例により受給要件は大幅に緩和されましたが、受給額についても以下のとおり拡充されています。

①休業・教育訓練をした場合の助成率の引き上げ
②解雇をしていないまたは一定程度の雇用数を維持している場合に助成率が上乗せされる
③教育訓練をした場合の加算額の引き上げ
④1人あたりの受給限度額の引き上げ

助成率については、緊急対応期間に入ってから(令和2年4月1日から)現在までに何度か変更があったため、令和3(2021)年12月時点のもの(令和4(2022)年1月の変更前)を次で解説していきます。

2021年12月時点の助成率とその仕組み

令和3(2021)年12月時点での助成率は以下の通りです。

中小企業:4/5(解雇等を行わなかった場合は9/10)1人1日当たりの上限額13,500円
大企業 :2/3(解雇等を行わなかった場合は3/4)1人1日当たりの上限額13,500円

※解雇等を行わなかった場合とは、令和2年1月24日以降について解雇等をしていないこと、および判定基礎期間末日(賃金締切日)の労働者数が各月末の労働者平均の4/5以上であることをいいます。

この他、会社の業績や特定の地域・業種により特例があります。
前者を業況特例、後者を地域特例といいます。

業況特例は、最近3か月の売上高の平均が、前年または前々年同期に比べ30%以上減少している企業が対象になります。

一方、地域特例は、緊急事態宣言の実施区域またはまん延防止等重点措置の対象区域において都道府県知事による営業時間の短縮等の要請等に協力する企業(飲食店など)が対象となります。

これらの特例に該当する場合、以下のように助成率がさらに手厚くなります。

中小企業:4/5(解雇等を行わなかった場合は10/10)1人1日当たりの上限額15,000円
大企業 :4/5(解雇等を行わなかった場合は10/10)1人1日当たりの上限額15,000円

※解雇等を行わなかった場合とは、令和3年1月8日以降について解雇等をしていないことをいいます。

2022年1月からの変更点は?

以上を踏まえて、令和4(2022)年1月からの変更点をみていきます。

大きな変更点は、
①対象期間の延長
②上限額の改定
③業況特例適用時の売上再確認
です。

注意していただきたいのは、これらは令和4年1月1日以降に始まった休業等について適用されます。休業期間の中に令和4年1月を含むものであっても、その初日が令和3年12月であれば、これらは適用されません。

では一つづつ順番にご説明します。

①対象期間の延長
雇調金は、通常「1年の対象期間内に行われた」休業等について受給ができると先ほどお話しました。今回、対象期間が「令和3年12月まで」から「令和4年3月31日まで」に延長されたことで、1年を超えて受給できる期間が令和2年1月24日から令和4年3月31日(休業等の初日が3月31日)までとなりました。

②上限額の改定
中小企業、大企業とも、1人1日当たり13,500円だった上限額は、1・2月においては11,000円に、3月には9,000円へと引き下げられます。
ただし、業況特例または地域特例に該当する場合は、昨年までの上限額が維持され、15,000円のままとなります。

【助成額まとめ】 ※( )内は解雇等を行わなかった場合
〈中小企業〉
 原則的な措置  :~令和3年12月  → 4/5(9/10) 上限13,500円
          令和4年1・2月 → 4/5(9/10) 上限11,000円
          令和4年3月    → 4/5(9/10) 上限9,000円
  業況・地域特例 :~令和4年3月  → 4/5(10/10)上限15,000円

〈大企業〉
 原則的な措置  :~令和3年12月  → 2/3(3/4) 上限13,500円
          令和4年1・2月 → 2/3(3/4) 上限11,000円
          令和4年3月     → 2/3(3/4) 上限9,000円
  業況・地域特例 :~令和4年3月  → 4/5(10/10)上限15,000円

※原則的な措置において、解雇等を行わなかった場合とは、令和3年1月8日以降について解雇等をしていないこと、および判定基礎期間(賃金締切日)末日の労働者数が各月末の労働者平均の4/5以上であることをいいます。
※地域・業況特例において、解雇等を行わなかった場合とは、令和3年1月8日以降について解雇等をしていないことをいいます。

③業況特例適用時の売上再確認
令和3年12月までに業況特例を利用した事業主で、今後(令和4年1月1日以降の休業)も引き続き特例を利用する場合は、業況を再確認するため、再度の売上確認資料が必要になります。
ここで比較するのは、判定基礎期間初日が属する月から遡って過去3か月とその前年同期、前々年同期または3年前同期(コロナ期以前)のいずれかになりますので、該当する年の資料を提出して下さい。

これら①~③の変更に伴い支給申請様式も新しく変わりますので、最新のもの(下記の申請様式ダウンロード)をお使いいただくようご注意下さい。

また、コロナ期の雇調金の詳細については以下をご参照下さい。

終わりに

令和4(2022)年1月現在、コロナ期の特例措置期間は令和4年3月31日までとなっておりますが、この期間についても過去に度々延長されてきたこと、さらに新種の変異種オミクロン株の影響で感染が拡大してきたことを考えると、今後どうなるかは全く予測ができず、注目すべきところです。これまでの流れからすると、現在大幅に緩和されている要件などが、徐々に厳格になっていき、この特例措置も少しずつ縮小されていくのではないかと予想されます。

今後、新たな変更点がありましたら、このブログでも紹介していきたいと思っております。


弊事務所は、愛知県名古屋市で創業60年を超える社会保険労務士(社労士)事務所です。
弊事務所では、複数の有資格者スタッフが雇用調整助成金だけでなく様々な助成金、労務管理、就業規則、労働問題など数多くの相談を受けてきました。
今回取り上げたの雇用調整助成金についてはもちろん、その他の事でも疑問点やお困りのことがございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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