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三六協定とは?ー新様式での締結内容と届出について



2022年が明けてからあっという間に2か月が過ぎ、間もなく新年度を迎えようとしています。そろそろ新年度に向けての準備を始められる方も多いのではないでしょうか。

新年度の準備は各分野多岐にわたりますが、その一つに、

「三六協定の締結」

があります。(必ずしも年度ごとに締結する必要はありませんが、多くの会社が年度単位で締結しています)

この「三六協定」は残業や休日出勤(=時間外労働)と深い関わりがあるため、労働者にとってはかなり身近な存在になるはずです。

しかしながら、その内容をきちんと理解されている方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。おそらくあまりいらっしゃらないのではないかと思います。

 

そこで今回はこの「三六協定」について取り上げます。

この記事を読めば、職場で締結している三六協定の内容を理解することができ、またその実務に携わっている方は、適法な三六協定の締結と届出ができているかどうかの確認ができるかと思います。

この機会にぜひ三六協定について学んでみて下さい。

 

目次

三六協定とは?

三六協定を簡単に説明すると、使用者が労働者に「残業」や「休日労働」をさせるために、その時間や頻度等について使用者と労働者が話し合って決めた内容を記載したものといえます。
裏を返せば、労働者が「残業」や「休日労働」をするうえで必ず必要なものになります。

使用者と労働者の話し合いで結ぶ協定はいくつも種類がありますが、この残業・休日労働に関する協定は、労働基準法の第36条に基づくため、「三六(サブロク)協定」もしくは単に「サブロク」と呼ばれます。

ここまで、使用者が労働者に残業や休日労働をさせるには「三六協定」が必要だいうことがお分かりになったと思いますが、一般的にいう「残業・休日労働」と協定が必要な「法律上の残業・休日労働」とは中身が異なる場合があります。

では、どのような場合が「法律上の残業・休日労働」となり三六協定が必要になるのでしょうか。それをこれからみていきます。

法定労働時間と法定休日

・「法定労働時間」とは?
例えば、通常1日7時間働く労働者がいたとします。この人が、ある日に7時間を超えて7時間30分働きました。このとき一般的な感覚であれば残業をしたことになると思います。しかし法律上ではこの30分は残業にはなりません。

それはなぜかといいますと、「法律上の残業」とは法律で定められた時間を超えた場合をいうからです。
この法律で定められた時間とは、「労働基準法が定める1日8時間、週40時間」です。(業種等により例外があります)これを「法定労働時間」といいます。
つまりは、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた時間が「法律上の残業」となるわけです。上記の例でいえば、7時間を超えて8時間になるまでは法律上は残業にはあたりません。8時間を超えてからが「法律上の残業」となります。


・「法定休日」とは?
休日労働についても同じことがいえます。月曜日から金曜日まで1日8時間働く労働者が土曜日も出勤した場合、一般的な感覚では「休日労働」になります。
一方で、労働基準法では、原則として1週間に少なくとも1日の休日を与えなければならないことになっています。この1週間に1日の休日を「法定休日」といい、この法定休日に出勤した場合が「法律上の休日労働」となります。法定休日は会社ごとに定めることになっています。

上記の例で、日曜日が法定休日として定められているとします。その場合、土曜日に出勤したとしても法定休日とした日曜日が休日であれば、「法律上の休日労働」には当たりません。(注:ただし、土曜日の労働時間は週40時間を超えるので「法律上の残業」にはなります)しかし、日曜日に出勤した場合、たとえ土曜日が休日であったとしても、「法律上の休日労働」となるのです。


以上のことから、1日あるいは1週間の法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える場合、もしくは週1回の法定休日に労働させた場合に三六協定の締結が必要であるといえます。

三六協定なしで残業・休日労働をさせたら?

わが国においては、過重労働による死傷病があとを絶たないことや統計的にも過重労働の傾向が見られることが深刻な問題となっていることから、残業規制に関しては一昔前と比べかなり厳しくなってきました。

三六協定を締結せず残業や休日労働をさせるのはもっての外ですが、たとえこれを締結していたとしても、その内容に法違反があったり、協定内容に違反して労働させた場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科されることもあります。(規制内容については後述します)

ここまでのことからもお分かりかと思いますが、使用者が労働者に「残業させる」「休日出勤させる」ということは、当然にできることではありません。実際は、法で禁止されたこと(残業・休日出勤をさせること)を協定をもって解禁しているのです。

したがって、三六協定を締結せず残業等をさせている企業や、締結していてもその内容に違反して労働させている企業は速やかに働き方や協定の内容を見直す必要があります。

三六協定締結の流れ

有効な三六協定にもとづいて適法に残業・休日労働をさせるには、次のステップを経ることになります。
1.使用者労働者と話し合いのうえ、残業時間・休日労働等について協定を締結する
2.協定届を作成する
3.監督署に届け出る
4.適切な労務管理のもとに協定の範囲内で残業・休日労働をさせる

では、次にこれらについて詳しくみていきます。
まずは協定を締結するところからです。

三六協定は誰と結ぶ?

三六協定を締結するにあたって(協定の適用を受ける)労働者1人1人と合意を得ることは、理想的ではありますが、労働者数が多ければ多いほど現実的ではありません。

そこで、労働基準法では「全労働者の過半数で組織する労働組合」、そのような組合がないときは「全労働者の過半数を代表する者」と締結することとされています。

「全労働者の過半数を代表する者」とは、パート・アルバイトなどを含む全ての労働者から適正な方法で選ばれた者でなければなりません。

具体的には、以下の条件を満たす必要があります。
・管理監督者(部長や工場長等管理職だからといって直ちに管理監督者に該当するわけではありませんが、ある程度の地位の方は避けた方が無難です)でないこと
・三六協定を締結する労働者代表として投票・挙手等の方法で選出されていること
・使用者の意向で選出されていないこと


どのような内容で結ぶ?(一般条項の場合)

誰と締結すべきかが分かったところで、次は三六協定の内容についてです。
最初に原則的な場合(一般条項)について説明します。

・協定の有効期間・起算日を決める
→協定が有効となる期間(1年間が一般的)と1年間の上限時間(後述の原則1年360時間等)を計算する際の起算日を決めます。有効期間が1年間の場合、その初日と上限期間計算時の起算日は同一の日になります。

・対象業務ごとに「1日」「1か月」「1年」について、残業時間の限度を決める
→法律上、残業時間の上限は原則として、1か月45時間、1年360時間です。(1年変形の労働時間制を採用している事業所は1か月42時間、1年320時間)特別な事情がなければこの時間を超えることはできません。

・対象業務ごとに、月当たりの法定休日労働日数と、その日の始業・終業時刻を決める
→上記を設定するにあたって、『残業時間と休日労働時間の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」がすべて1か月あたり80時間以内』という制約があります。協定届の様式にもこちらを満たしているか確認のチェックボックスがあります。

どのような内容で結ぶ?(特別条項つきの場合)

次に、上記の時間(1か月45時間、1年360時間)を超えて残業・休日労働をさせる必要がある(「特別条項」をつける)場合について説明します。

・「特別条項」とは?
協定で定めた期間の途中に、想定を超える受注や機械のトラブルなど何か突発的な事情で1か月45時間、1年360時間を超えて残業をさせなければならないこともでてくるかもしれません。そのような場合は、三六協定に「特別条項」を設けることで、1か月45時間、1年360時間を超えての残業が可能になります。特別条項を設けるにあたっては、「臨時的な特別の事情」であることが必要です。
「業務上やむを得ない場合」など具体性に欠け、恒常的に長時間労働につながるおそれがあるものは認められません。

また、特別条項を設けたからといって、何時間でも残業が可能になるわけではありません。
次の上限規制を守らなければ、法律違反として罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されることがあります。
① 残業時間が1年で720時間以内
② 残業時間と休日労働時間の合計が1か月で100時間未満
③ 残業時間と休日労働時間の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」がすべて1か月あたり80時間以内
④ 残業が1か月45時間を超える回数は1年で6回(6か月)まで

注意:②③については特別条項の有無にかかわらず、1年を通じて常に守らなくてはなりません。(休日労働が多い場合、特別条項を設けていなくても違反となる可能性があります)

※上限規制の内容については、具体例をもとに別記事で改めて解説する予定です。

・上限規制の適用猶予・除外について
上記の上限規制については、「建設事業」「自動車運転業務」「医師」「鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業」には2024年3月31日までの適用猶予(砂糖製造業については②③のみ)があります。

その後の取扱いについては、以下の通りです。
建設事業:災害復旧復興の事業に関しては②③の適用なし。その他は①~④まですべて適用あり
自動車運転業務:①について年間960時間まで。②③④は適用なし
医師:上限時間は今後省令で制定予定
砂糖製造業:①~④まですべて適用あり

監督署に届け出るには?

上記で締結した内容を監督署に届け出るため、協定書とは別に所定の様式(届出)に記入します。届出の不要な協定もありますが、三六協定は締結した後、必ず労働基準監督署に届け出なければいけません。

様式・記載例
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/36_kyoutei.html

こちらの様式は、2019年4月から新様式となっております。
以前と何が変わったのかといいますと、
・使用者・労働者の署名・押印ながなくなった(ただし、「協定書」自体には必要)
・労働者代表が適正に選出された者かどうかを確認するチェックボックスの欄が設けられた
・特別条項の有無で様式が別々になった(一般条項→様式第9号、特別条項→様式第9号の2)
です。

協定届が用意できたら、事業所管轄の労働基準監督署に提出します。届出は支店や工場などの事業所ごとになりますので、協定はそれぞれの事業所で締結し、届を提出して下さい。

ただし、電子申請の場合は、本社が一括して届け出ることが可能です。その場合でも、協定の締結自体は各事業所ごとになりますのでご注意下さい。

届出をした後は

届出が済んで監督署で受理されると、ようやく残業・休日労働をさせる準備が整います。これで協定の範囲内で、残業・休日労働が可能になります。
しかし、協定を締結したからといって、むやみに残業・休日労働をさせるのは使用者・労働者お互いのためになりません。

次の点に留意して適切な労務管理を行って下さい。

① 残業・休日労働は必要最小限に抑えること
→残業時間・休日労働が増えれば増えるほど、労働者の健康を害するリスクが高くなります。三六協定の範囲内であっても、できる限り最小限に抑えられるようにして下さい。

② 1か月45時間、1年360時間を超えて労働をする労働者の健康に配慮した措置をとること
→特別条項を設ける場合、協定届にも記載すべき事項になります。健康診断や面接指導などの専門家によるサポートや、代償休暇や勤務間インターバル(終業時間から次の始業時間までに一定の休息時間を設ける)等、長時間労働の労働者の健康を確保するようにして下さい。

③ 労働時間を適正に把握する
→使用者は労働者に対する安全配慮義務を負うことから、労働時間を適正に把握する義務があります。また残業時間を管理するためには大前提の事項です。タイムカードや、ICカード、タブレット機器などを利用して出退勤等の時刻は正しく記録するようにして下さい。

まとめ

ここまで、三六協定の意義や締結の方法などについてみてきました。
この記事を通して、三六協定は労働者に残業や休日労働をさせるうえでいかに重要であるかがお分かりになったかと思います。

ぜひこの機会に三六協定の内容や労働時間管理について一度見直してみて下さい。


弊事務所は、愛知県名古屋市で創業60年を超える社会保険労務士(社労士)事務所です。
弊事務所では、複数の有資格者スタッフが労働時間の管理業務に携わっております。
また、三六協定のほかにも変形労働時間制の届出や様々な労務管理、就業規則、労働問題、助成金など数多くの相談を受けてきました。
今回取り上げたの三六協定についてはもちろん、その他の事でも疑問点やお困りのことがございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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